天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

岩煙草

鎌倉・円覚寺にて

 イワタバコ科の多年草。葉や花の感じがタバコに似ていることが名前の由来。本州から九州、台湾に分布し、谷間などの岩壁に群生する。6月から8月にかけて紅紫の花をつける。葉は薬用、食用になる。
 今の時期、鎌倉の谷戸でよく見かける。


      大鉢にうろくづ生くる木下闇
      山門の軒をはやせる雛の声


  苔むせる石垣に咲くユキノシタ女かがみてカメラ構へる


  山門の下より聞こゆ北鎌に電車近づく踏切の音


  かけて来し幼児あやふし山門の階にまろびて泣きにけるかも


  山門の軒下蔭にとびきたるハクセキレイは吾に気付けり


  しみ出づる水にそまるか断崖にうすむらさきのイワタバコ咲く


  新聞をひらくまなかひ白鷺の冠羽根が風にそよげり


  水深の浅き流れの川中に白鷺立ちて風に吹かるる