天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小田原の紅葉

西海子小路の桜紅葉

 春、桜の時期に紹介した西海子小路(さいかちこうぢ)は、小田原文学館の横を一直線に通っている。名前の由来は、この通りにサイカチの木が立っていたことにあるという。江戸時代末期に中級の家臣の武家屋敷が十八軒、道の両側に並んでいた。


      黒松に鱗ありけり冬日


  窓に貼る貸家売家の物件に顔よせてゐる朝老夫婦
  小田原城小峰曲輪(くるわ)の北堀に朝の水あぶヒヨドリのむれ
  春に見し西海子小路のはなやぎの桜並木のもみぢかなしむ
  中級の武士が屋敷をならべしと桜もみぢの西海子小路
  移築せし尾崎一雄の書斎より高きに咲けり皇帝ダリア
  さまざまの小鳥の声をとどめたり白秋童謡館の庭先
  霜月の白秋童謡館にきて尻につめたし青磁の椅子は
  詩を思ひ三好達治が筆とりし旧居の窓に朝日さしたり
  ひむがしに向きてひたすら撥を打つ樟の根方の津軽三味線
  城門を入りても聞こゆ老の身の怒れるごとき津軽三味線