三好達治の小田原旧居
生涯の一時期を小田原に居を構えた小説家や詩人は、意外と多い。詩集の『測量船』、『草千里』、『駱駝の瘤にまたがって』などで知られる三好達治もそのひとりである。坂口安吾もすぐ近くに住んでいたらしい。
三好達治は大阪市に生まれた。室生犀星や萩原朔太郎に強い影響を受けて、清新な感覚で格調高く現代の抒情をうたった。1930年、30歳の時出した第一詩集『測量船』で地位を確立。多くの国語の教科書に取り上げられているので、なじみ深い詩人である。次の詩など、高校生の時、胸震わせてニキビ面に夢見たものである。
甃(いし)のうえ
あわれ花びらながれ
おみなごに花びらながれ
おみなごしめやかに語らいあゆみ
うららかの跫(あし)音 空にながれ
おりふしに瞳をあげて
翳(かげ)りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍(いらか)みどりにうるおい
廂(ひさし)々に
風鐸(ふうたく)のすがたしずかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうえ
(詩集『測量船』から)