天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の磯釣り

江ノ島にて

 江ノ島の裏の岩礁では、今頃大型の鯖が釣れる。釣った鯖はその場で、腹を割き腸を抜いてアイスボックスに保存する。雑魚もかかるが、その時は空に掲げて振っていると、鳶たちが上空にやってくるので、放りあげると、さっと下降してつかみ取る。クリスマスの一週間前ともなると、橋の欄干や島の道沿いの木々に電飾の線が張り巡らされる。山の木立には藪椿が花を咲かせている。


    電飾の橋がまたたく年の暮
    釣上げし雑魚に鳶鳴く小春かな
    年の瀬の岩場に鯖の腹を割く
    秋鯖の頭にも残れる海の色
    江ノ島やいづこの店も白子丼
    あからひく朝日まぶしき藪椿
    つらなりて白帆出でゆく師走かな
    磯釣の雑魚待ちて鳴く冬の鳶


  龍恋の鐘にいざなふ電飾の線めぐらせる江ノ島の丘
  花弁も蕊もま白き水仙の花の上なる龍恋の鐘
  山の上に塔立てる見ゆ漁村なる「相州江ノ島北斎の筆
  石段の手摺に止まり動じざる嘴太鴉をよけて下りぬ