椿
ツバキ科の常緑高木で日本特産。従って、漢字「椿」も日本で考案されたもの。原生種は、春になると赤い大輪の五弁花を開く。昔つばきと呼んだものは、山椿、藪椿である。早咲きは十一月から、遅咲きは五月まで咲く。現在は園芸種が多い。古くから多くの歌人が詠んでいる。
巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を
万葉集・坂門人足
かがみ山みがきそへたる玉椿影もくもらぬ春の空かな
藤原定家
山川のみ冬の瀞に影ひたす椿は厚し花ごもりつつ
北原白秋
ただひとつ昏れゆく心ぽったりと土に椿のくれないは落つ
岡部桂一郎
はやち風ふきすぐるたびいそのかみ古木のつばきあかあかとして
玉城 徹
小楯なす椿つやつや咲くものをわれにしばしの妄語ゆるせよ
馬場あき子
わが死後の骨の壺かもひとへなる椿あかきをたつぷりと挿す
小中英之
心臓のあたりつめたき水深ありつばき花咲く坂をのぼりて
小池 光