天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

子規と横須賀

JR横須賀駅前ヴェルニー公園にて

 NHKの総合テレビで司馬遼太郎の「坂の上の雲」を放映している。司馬遼太郎の小説は、全て読んで、よく知っているつもりなので、放映の全部を見てはいない。ところどころを見ているだけなのだが、つい懐かしくなって横須賀に記念艦・三笠を訪ねてみたくなった。歳晩なので、閉館していることを承知で横須賀に行ってきた。
 JR横須賀駅の前に広がるヴェルニー公園のダイエイ寄り「さくらの広場」の片隅に、海軍の碑、軍艦山城之碑、国威顕彰の碑、軍艦長門碑、軍艦沖島の碑 などと同列に、正岡子規の次の句の碑がある。裏に平成3年11月建立とある。

       横須賀や只帆檣の冬木立     子規


 この句は、明治21年(1888)8月、夏季休暇を利用して、友人と共に汽船で浦賀に着き、横須賀、鎌倉に遊んだ折に作ったもので、句集「寒山落木」に収録されている。という内容が、横の「正岡子規の文学碑」という説明板の冒頭に書かれている。手元の岩波文庫版『子規句集』を開いて、明治21年の項を見たが、載っていなかった。この句集は高浜虚子選なので、子規の句が全部載っているわけではない。念のため、歌に横須賀を詠んでいないか、歌集『竹之里歌』の相当箇所を探ってみたが、無かった。
 ところで、この句、写生ではなく、想像の産物である。夏に来て帆柱の林立から、冬木立を連想してみたのである。「夏木立」とはさすがにできなかった。葉が鬱蒼と茂っていなければならないので、帆を下して柱だけの風景では無理だったのだ。まあ、遊びの句であり、時代背景を考慮にいれても深みは感じられない。句碑とはえてしてこうしたもの。
 記念艦・三笠のところに行ったら、案の定、閉館であった。特別展として、「秋山真之正岡子規」が、平成21年11月29日から平成22年5月9日まで開催されることを知った。年明けてから、改めて行くことにする。


  記念艦・三笠の展示見にゆかむ子規、真之の坂の上の雲