天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

年始の鎌倉

寿福寺にて

 三が日の鎌倉は、初詣客で身動きができないので足を向けない。四日目の仕事始めでも大変な人出であった。寿福寺に寄ったら、日ごろは閉じている山門が、今日は開いていて、庭に入ることができた。四隅に柏槇の古木を見る。裏山の墓地に虚子の墓も訪ねた。
 八幡宮では、手斧始式が始まろうとしていた。この神事は、古来重要な工事に先立って行われていたもので、八幡宮創建の際には「造営事始」という名で儀式がなされたという。今日では、鎌倉全体の工事始めという意味があるらしい。

       あらたまの風に卒塔婆鳴りにけり
       風化せし墓石多し寒椿
       年明けて熊手の箒門前に
       先ず参る仕事始めの鶴岡


  鎌倉のところどころに古りてたつ村社の鳥居注連縄(しめ)新しき
  あらたまの年の開門寿福寺の柏槇四株捻れ古りたる
  童女童女を左右にして虚子ねむるなり寿福寺の墓地
  住み古りし家の垣根にあらたまのかをり立ちたり蝋梅の花
  さまざまの屋台ならべる境内に参拝せむと人列なせり
  火の玉の三つ巴なる提灯のあまた点れり若宮大路
  
 五日は午前十時から、「除魔神事」が執り行われる。装束に身を包んだ射手が、裏に「鬼」という文字を封じ込めた大的を、27mの距離から弓矢で射る儀式であり、境内で売られている破魔矢の元になっている。