はまぐり
マルスダレガイ科の二枚貝。北海道南部から九州の内湾の潮間帯付近の砂泥底にすみ、養殖もされる。東京湾や伊勢湾などでよく採れる。桑名市の焼き蛤は有名。夏が産卵期。食用には韓国からシナハマグリも輸入されている。なお、平安時代から貝合せに用いられてきた。俳句では、春の季語。
引く汐に遅れ蛤走りけり 殿村菟絲子
蛤を採る腰波のたたみ来る 川田朴子
今ぞ知る二見の浦の蛤を貝合せとておほふなりけり
山家集・西行
蛤のみかたやいづれわきかねてこなた彼方につく世なりけり
大隈言道
人は死に生きたる我は歩きゐて蛤をむく店を見透かす
北原白秋
雉子(きぎす)海に入りて染むとふ蛤のしろき身肉の熱きを啜る
大滝貞一
蟹食いておりし蛤 もろともに食らいつつ灯のなかの家族ら
永田和宏
蛤の一夜砂吐く厨かな