天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

浮寝鳥

三渓園にて

 横浜三渓園に行く電車の中で、読んだのだが、「古志」一月号から副主宰・大谷弘至の評論「虚子論」が始まった。初回は、死を描いた虚子という題で、虚子の小説「柿二つ」が主題。。これは正岡子規の臨終を看取った写生文であり、虚子の次の俳句の背景。

     子規逝くや十七日の月明に

 この小説を機に、虚子の句境はぐんと深みを増した と大谷は説く。読み応えのある評論で、今後が楽しみだ。
 閑話休題。浮寝鳥について。水に浮いたまま眠っている鳥を云う。これは俳句の冬の季語「水鳥」の傍題。鴨、カイツブリ、百合鴎、鴛鴦などの冬の水鳥を総称している。


     雪のせて軽くゆれをり浮寝鳥    掘 蘆男
     水際まで尺の積雪浮寝鳥      古賀まり子
     山影を日暮とおもひ浮寝鳥     鷹羽狩行
     水鳥やあたたかさうな海の色    清水基吉