天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

野毛山動物園

孔雀の放し飼い

 野毛山公園一帯には、かつて原善三郎や茂木惣兵衛といった横浜の豪商の邸宅があった。関東大震災によって壊滅した後、公園として復興整備された。第二次大戦中は陸軍が使用し、戦後は昭和22年まで米軍に接収されていた。接収解除の昭和24年に、日本庭園だったところに動物園が、さらに昭和26年には洋式庭園だったところに児童遊園が造られた。その後も整備を続けて現在に至っている。中村汀女の句碑や佐久間象山顕彰碑(昭和二十九年十月一日の建立)がある。動物園は、こじんまりしているが、孔雀の放し飼いなど企画に工夫して人気がある。入場無料。


     野毛山に笹子鳴くなり汀女句碑
     チンパンジー早や春愁にしづみたる

     
  街路樹の根方にゴミの袋積む金曜朝の野毛坂通り
  野毛山の佐久間象山顕彰碑横浜開港の先駆けとして
  食事後の運動ならむ岩蔭の椿をちらすレッサーパンダ
  二00七年生まれのミヤコタナゴ見る野毛山動物園の水槽
  カグーとふ飛ばざる鳥は希少なりニューカレドニアの森林に棲む
  野毛山に春来たるらし羽根ひろげ羽根ふるはする雄の孔雀は
  夕去れば「笛吹童子」「紅孔雀」近所の子らとラヂオ囲みし
  水浴びをせむと下りたるオオタカは水のなければ首かしげたり
  水撒ける朝の掃除を見守りてショウジョウトキは檻の片隅
  木に懸かる巣箱の上の鴛鴦をブロンズトキが追い出しにけり
  水浴ぶる音けたたまし嘴に羽根梳く朝のオオハクチョウ
  岩に立ち羽根ひろげたるコンドルに子等も両手をひろげてゐたり


ショウジョウトキはコウノトリ目トキ科。カグーはツル目カグー科の希少動物。