天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

六月の漁港

平塚漁港

 どこの漁港に来ても見られる情景だが、天気の良い日には平日でも釣りをしている人たちがいる。高齢者が多いようだが、若者もまじる。特に大物が釣れるわけでもなく、雑魚を釣っては捨てることを繰り返す。お互いに顔なじみらしく、身内の近況なども話している。夫婦できている人たちもいて、昼になると手作りの弁当を開く。突堤の空には、鳶が廻って、捨てられた雑魚を狙う。鴉どもが遠巻きに見ている。


  竿先を見つつし坐る砂浜に南の風はしめり帯びたり
  幾重にもテトラポッドの重なれる岸辺に咲けり浜昼顔は
  浚渫の砂を均せる海岸は風がはこびし草に青める
  釣りあぐる鰯や河豚は突堤にうち捨てられて跳ぬるたまゆら
  晴れた日は突堤にきて釣をする老人のむれ同じ顔ぶれ
  突堤に坐りて釣れる時の間を医者にかかりしことも話せり
  ありあまる時間すごせる突堤は釣りて捨てたる鰯、草河豚
  昼くれば弁当ひらく新聞紙夫が頬張る海苔巻むすび
  突堤に乾きて死せる小魚を狙ふものあり鳶と鴉と
  休日を待ちて舫(もや)へる釣舟が波にたゆたふ河口の港
  釣舟の家族の住めるアパートは潮風の中もの干せり見ゆ