天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

案山子

横浜市東俣野の田園にて

 「かかし」あるいは「かがし」 と読む。農作物を鳥獣から守るために田畑に立てるものであるが、稲田に立っているものが代表的。地方によって呼び名が異なる。百科事典によると、次のような例をあげている。
  ソメ: 長野、岐阜、愛知  
  シメ: 徳島、種子島  
  オドシ: 北陸、近畿、中国、四国、九州の一部
「かかし」の語源は焼いた獣肉など悪臭を放つものをつけた「嗅がし」にあるという。こんな悪臭のする案山子は見たことも聞いたこともないので、多分、かなり昔の形態であろう。鳴子や空缶などをぶら下げて音を立てる形態も都市部では、あまり見かけなくなった。いずれも住民環境への配慮から当然であろう。

     銀閣寺門前の田の案山子かな      富安風生
     遠山も風の案山子も伊賀のうち     桂 信子
     あたたかな案山子を抱いて捨てにゆく  内藤吐天


  案山子だに紅き襤褸(つづれ)を着るありてうつしよごとは
  あはれなりけり               岡野直七郎

  田の中にへのへの案山子モンペ穿き 母なる戦後すでに終りき
                        田浦孝子


  ビニールの黒き切れ端そこここに稲田になびく秋は来にけり