早春賦―田浦・梅の里―
JR横須賀線・田浦駅から徒歩で20分ほどのところにある。このところ比較的天候が温暖であったので、梅林は満開になっているのでは、と期待したのだが、ガッカリであった。小高い山の上は、桜の裸木が林立しているので、四月ともなれば、花に覆われて見事な眺めになるはず。
梅林を登りきったところに、詩碑が立っている。この詩人については、残念ながら詳しいことが全く分らない。この一帯は、以下の説明に有るように個人の所有であった。
土の呼吸を
肌で感じる丘の広場に
私は翳りなき魂の故里をみる
石川 宏
裏面には、次のような由縁が書かれている。
この碑の建つ「田浦緑地」は、表に刻んだ詩の作者石川宏さんが、
昭和五十一年横須賀市へ寄附された山林約三十六万平方メートルを
中心に造られたものである。
石川宏さんは、先祖代々この地元田浦町の住人で大学教授、詩人
でもある。寄贈の趣旨は、本市がすすめている「グリーンよこすか」
運動に役立ててほしいということと、前年亡くなられた母親美枝さん
の遺志によるものであった。
市は市制施行七十周年記念事業の一つとして造成に取りかかった。
何れの日か寄付者の意図にそうた壮大で夢多き緑の宝が、この田浦
の地に出現することを心から期待して、ゆえんをここに誌す。
昭和六十一年三月吉日
横須賀市長 横山和夫
遅咲きの梅をちらして春一番
白梅の空を見てゐる水仙花
梅林の山にのぼれば詩碑ひとつ
「あんパン」ののぼり一旈ミモザ咲く
川に添ひまた道なりにゆくほどに矢印ありて「田浦梅の里」
梢にはつぼみばかりだ かをれるは梅の根方の水仙の花
水仙の花咲く丘は早咲きの白梅ちらすきさらぎの風
白梅の雲のなかなる紅梅の一本うれし田浦梅の里
伝来の山を寄贈し詩碑ひとつ建ててもらひし大学教授
梅林の山にのぼれば詩碑ひとつ寄付せし人を市は称へたり
白き青き赤き札垂る 梅の木はなべて白花咲きにたりけり
中東のジャスミン革命思ひ出づ田浦の沖の石油タンカー
梅林の道をのぼれば来む月の花のまたるる桜木の山
青白き作業衣着たる職員が寄贈の山を公園にする
椿一花おちたる道の山際に鹿の子まだらのカゴノキが立つ
帰宅してテレビを見れば春一番関東地方に吹きしと言へり