天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

早春賦―湯河原梅林―

湯河原梅林にて

 湯河原梅林は、城山を挟んで温泉街の反対側、幕山のふもとにある。幕山の岩壁は、ロッククライマーにとっては有名なゲレンデであり、その眼下に梅林が広がっている。以前は、毎年のように、幕山から隣の南郷山を歩いたものだが、このところご無沙汰している。今回も、霧雨が降ってくるし、奥の白銀山は、うっすらと雪を冠っていたので、幕山頂上まで行くことはあきらめた。かわりに梅林を散策路に添って、西のあずまやから東の梅林最高点まで歩いた。
 ここの梅の種類には、おおまかには「想いのまま(紅梅と白梅が一本の木に咲く)」「青軸梅(額が青い珍しい梅)」「しだれ梅」などがある。


     紅梅のかなたは昨夜(きそ)の雪の山
     梅林のなだりに散りし寒椿
     岩壁をのぼる眼下は梅の花
     むくつけき鵯のこゑ梅真白
     神さびし梅に花咲く岩の山
     岩山に白き杖ひく梅見客
     岩壁にロープ垂れたり梅の花
     目がしらの痒くなる頃ミモザ咲く
     川岸に芥(ごみ)をとどめて水ぬるむ


  梅林の山路に散れる寒椿踏みにじられてくれなゐ無惨
  神さびし梅の木に咲くくれなゐの花のしづくにヒヨドリの声
  「急がないで寄っていきな」と声かくる「梅の宴」の出店の主
  雪解水はた大雨のはこび来しごみ屑かかる岸の草萌え