天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

清明のしだれ桜

箱根入生田長興山にて

 今年も恒例により、小田原入生田にある長興山のしだれ桜を見に行った。八分咲きといったところだが、見事である。東日本大震災に配慮して、関東地方では花見を自粛しているためか、例年になく客は少なかった。
早川を挟んで長興山の向かいの石垣山にも行ってみた。早川に掛る太閤橋から石垣山一夜城跡へは2700メートル。入生田から一夜城跡の石垣山まで立派な車道が完成していた。去年は工事中であったが。
 石垣山の桜は、まだ蕾の状態がほとんどで、桜がどこにあるのかさえ、わからいほどであった。ただ、早くもシャガの花が咲いていた。


     首筋をさくらの風に晒しけり
     一夜城天守台跡しゃがの花
     一夜城馬屋曲輪の辛夷かな
     城跡の石垣崩れすみれ咲く
     石垣に太閤しのぶ桜かな


  息荒く坂のぼり来し長興山しだれ桜は八分咲きなり
  一代目しだれ桜のかたはらに負けじと咲ける二代目の花
  長興山しだれ桜は数百年季(とき)の至ればあやまたず咲く
  観世音菩薩の腰のなまめきてわが煩悩を断ちがたくする
  一夜城石垣のためと掘り出せる大岩なれど捨て置かれたり
  長興山しだれ桜を遠く見る石垣山の一夜城跡