五月の北鎌倉
新緑の影が心地よい円覚寺、東慶寺、浄智寺の境内を歩いた。円覚寺の松嶺院では、入園料百円で境内の花を見て回った。垣根に咲く鉄線の花が印象的であった。東慶寺では、翁草に初めて出会った。またわずかな都忘れの花を見つけることができた。浄智寺では卯の花がこぼれていた。澁澤龍彦の墓所があるのだが、未だにその場所を知り得ない。
弓引くや五月の朝の閻魔堂
石楠花や塔中の庭を明るうす
囀りのしたたりくるや墓地の森
初つばめ「きたかまくら」の駅に入る
開高健、開高道子、牧羊子ひとつの墓に眠るは羨し
あやめ咲く池のほとりにからころと声ころがせる谷戸雨蛙
大杉に熊手箒をたてかけてなんぢやもんぢやの花を見てをり
かぼそきはなんぢやもんぢやの白き花数かぎりなく土に散り敷く
撫でられて腹黒ずめる布袋尊谷戸のやぐらに囀りを聞く
浄智寺に入りて澁澤龍彦の墓所はいづこと問ふ時鳥