天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鑑賞の文学 ―短歌篇(19)―

日本経済新聞社刊

  きみがため二年続けし連載の『うたの動物記』が本になりたり
                  小池 光(短歌人・7月東京歌会)


 日本経済新聞に連載された同名の記事が本になったのである。初句の「きみがため」とは、昨年末に亡くなった夫人のこと。執筆の期間、夫人は病床にあった。夫人を看病しながらの執筆であったが、夫人からかえって励まされたであろう。
結句が、軽い驚きと喜びを亡き夫人へ報告する形になっている。また、初句の「きみ」をひらがな書きにして、柔らかな情感にしている点も見逃せない。特別の言葉を使っているわけでもないのに心に響く。実に上手である。
 この詠草が出された7月の東京歌会で、小池さんは後半の進行役を担当されたが、以前と変わらぬ愉快な話しぶりなので、夫人を亡くした傷心から立ち直られたことを確信した。
 本の『うたの動物記』は、七月二十一日の刊行予定。さっそくアマゾンに注文した。今週末か来週早々には手に入る。