天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

サルビア

大船フラワーセンターにて

 シソ科の一属。一般には薬用にするセージあるいは観賞用に栽培されるものをさす。種類によって次のように原産地は異なる。和名から花の色が分る。
   [種類]      [和名]       [原産地]
  スプレンデンス   ひごろもそう      ブラジル
  パテンス      そらいろさるびあ    メキシコ
  ホルミナム     むらさきさるびあ    南欧
  コクシネア     べにばなさるびあ    熱帯アメリ
  ファリナセア    ブルーさるびあ     北米テキサス
約700種にものぼる。どの種類が最初か調べていないが、わが国には明治の中頃に渡来したという。


     サルビヤと売る脣に西日増す   飯田龍太
     サルビアの静けさとあり爆心地  岡澤康司


  鶏頭とサルビアの花ただ二ついまだも朱きわが庭の上
                     半田良平
  秋となりわが膝さむき夜夜を燃え尽きぬなりさるびやの花
                     斎藤 史
  雨の中サルビアなびき鮮血のながるるごとき時はつづけり
                     加藤克己
  サルビアの霜枯れてたもつ朱みれば心の修羅のゆらぎ
  たちくる               岡野弘彦


  サルビアの緋の花群が陽に照れり凝(こご)りてそこに
  時のうごかぬ            真鍋美恵子


[注]飯田龍太の句はどのように鑑賞したらよいのだろう。
  助詞「と」の次にどんな言葉が省略されているのか?
  「と(共に)」か「と(言って)」か? また「脣」とは
  女の喩(提喩)か? 実はこの句、昭和三十一年刊『童眸』に、
  「天王寺公園よりジャンジャン横丁といへる界隈を抜けて
  飛田に出づ(八句)」とある内の一句である。飛田遊郭の跡を見た
  時のイメージと解釈する。