天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

翁草(おきなぐさ)

入生田の地球博物館にて

 キンポウゲ科多年草。プロトアネモニン・ラナンクリンなどを含む有毒植物。漢方では根を乾燥させたものが白頭翁と呼ばれ、下痢・閉経などに用いられる。


  しらけゆくかみには霜やおきな草ことのはもみな
  かれはてにけり            源 順


  かみさびて山辺に見ゆる翁草いとど雪つむ春ぞ
  かひなき              藤原高遠


  最上川ながれゆたけき春の日にかの翁ぐさも咲き
  いづらむか             斎藤茂吉


  おきなぐさここに残りてにほへるをひとり掘りつつ
  涙ぐむなり             斎藤茂吉


  小園のをだまきのはな野のうへの白頭翁(おきなぐさ)
  の花ともににほひて         斎藤茂吉


  をさなごやまだ覚めざらむ妻と出て翁ぐさ踏むこの
  しめらひを             北原白秋


  年々(としどし)のおきな草の花も絶えぬるに此の道芝
  のたのしかりけり          土屋文明


  おきなぐさ黒き花咲き遅々として来む春を待つ牛も
  われらも             石川不二子