天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

舟虫

真鶴岬の海岸にて

 等脚目フナムシ科の甲殻類。熱帯から温帯の海岸に広く分布する。雑食性で、藻類や生物の腐肉などを食べる。


     船虫に忽然としてヨットかな  中村汀女
     舟虫を走らす雨に海女の声   藤田湘子


  日ざかりは巌を動かす海蛆(ふなむし)もぱつたりと
  息をひそめけるかも         北原白秋


  時雨する音かとも思ふ舟虫ら群類離合やみまなき岩  
                    生方たつゑ
  舟虫の無数の足が一斉にうごきて舟虫のからだを運ぶ
                    奥村晃作
  砂浜につづくと信じ来しものを船虫あまた這へる
  火葬場               安田純生


  舟虫の鋼(はがね)の胴があゆみをりそのしづこころ
  ほろぼしがたし           坂井修一


俳句の二作品はいずれもイメージ鮮明。奥村晃作の歌はよく知られていよう。