天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

吾亦紅

藤沢市新林公園にて

 ワレモコウは、バラ科・ワレモコウ属の植物。日本列島、朝鮮半島、中国大陸、シベリアなどに分布。漢字表記には他に我吾紅、吾木香、我毛紅などがある。根は地楡(ちゆ)という生薬でタンニンやサポニン多くを含み、天日乾燥すれば収斂薬になり止血や火傷、湿疹の治療に用いられる。


     ひとの子を濃霧にかへす吾亦紅     橋本多佳子
     山の雨束の間なりし吾亦紅       高田風人子


  偶然に子が採り来しとふ望の夜のすすきに添へて吾亦紅あり
                    田谷 鋭
  青銅の甕をし打てば秋草や吾亦紅のみびびと震いぬ
                    橋本喜典
  寂しがる心なだめていちにんの旅人となる野に吾亦紅
                    林田昌生


 吾亦紅は源氏物語(匂宮)には出ているが、古典和歌集ではどのあたりから出て来るのか、調べているがまだ見つからない。平安中期の『狭衣物語』や室町時代の家集あたりに見えるのだが。


     はらからの枝分れせり吾亦紅