天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

囲炉裏

山梨県忍野村にて

 暖房や炊事に使われる屋内の炉。3尺から6尺四方のものが多いが、長方形もある。家族のそれぞれが坐る場所が決まっていた。炉の上方に自在鉤があり、鍋釜を吊るして煮炊きができる。
俳句では、季語「炉」の傍題になっている。


     炉の僧の立たれて猫を従へる   大野佳子
     炉話のいよいよ狐狸に及びたる  竹腰八柏


  ゐろりべにわれら坐りて夜深し黒部川の大きなる
  岩魚を炙る              川田 順


  ふゆの日の今日も暮れたりゐろりべに胡桃(くるみ)
  をつぶす独言(ひとりごと)いひて    斎藤茂吉


  炎々と囲炉裏に粗朶(そだ)のひびきたるわが幼年は
  過ぎにけるかな            宮 柊二


  母の家の大きゐろりに坐るときおろかのなみだかくし
  もあへぬ               坪野哲久


  幼らを眠らす炉辺のものがたり山姥雪ん子どれもわが知る
                     竹安隆代