天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鹿

横浜市俣野町春日神社にて

 偶蹄目シカ科の哺乳類の総称。欧州、北アフリカ、アジア、南北アメリカに分布。13属41種が知られている。雄の角は毎年春に落ち、すぐに柔らかい袋角が生える。秋の初めに皮がはげ落ちて硬い角が現れる。
 いにしえより和歌には多く詠まれた。呼び名としては、「しか」「か」「すがる」「かせぎ」などあり。例えば、万葉集で58首、古今集で12首、新古今集で29首 といったところ。


  夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かずい寝にけらしも
                  万葉集・舒明天王
  奥山にもみぢ踏みわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋はかなしき
                  古今集・読人しらず
  すがるなく秋のはぎはら朝たちて旅ゆく人をいつとか待たむ
                  古今集・読人しらず
  した紅葉かつちる山の夕時雨ぬれてやひとり鹿の鳴くらむ
                  新古今集藤原家隆
  山深みなるるかせぎのけ近さに世に遠ざかる程ぞ知らるる
                     玉葉集・西行
  夜はになく声にこころぞあくがるる我が身は鹿のつまならねども
                 金葉集・内大臣家越後
  世の中よ道こそなけれおもひ入る山の奥にもしかぞ鳴くなる
                   千載集・藤原俊成