天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ラクダ

富士サファリパークにて

 偶蹄目ラクダ科ラクダ属2種の哺乳類の総称。まぶたは二重で砂塵を防ぎ、鼻孔も自由に開閉できるので砂漠の生活に耐えられる。乗り物や運搬に利用するが、乳、肉、毛なども役に立つ。ヒトコブラクダフタコブラクダがいる。次の歌の作者・鹿津部真顔は、江戸時代後期の狂歌師・戯作者。


  からうたを出でてらくだのたんざくの三つに折れたる
  あしはらの国            鹿津部真顔


  北平(ほくへい)の城壁くぐりながながと駱駝の連(つら)は
  あゆみそめ居り            斎藤茂吉


  溌泥(はね)あげて駱駝の車とほるなり楊(やなぎ)の花が
  ふはふはと落つ            川田 順


  ゆらゆらと瘤揺る駱駝をりをりに細きひとりの目をあげてをり
                     初井しづ枝
  砂暑き曠野を来しがわが曳ける駱駝の水を充たす娘もなし
                     大野誠
  知己を探さむと獣園にきたりけり秋の駱駝のさびしき笑ひ
                     塚本邦雄
  砂原に日は照りみちて音もなし駱駝のむれの二つあひ寄る
                     岡野弘彦
  宙吊りのごとくに顎あげよれよれのひとこぶ駱駝が荷を曳き
  ゆきぬ              蒔田さくら子


  かなしみて来し獣園にあらざれど襤褸のらくだの瞑想をせり
                     永田和宏
  たとふれば瘤もつ駱駝夜半に思ふ父としてあるこのかなしみは
                     影山一男