天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

春蘭

大船フラワーセンターにて

 蘭科の常緑多年草。東洋ランの一種として観賞用に多数の品種が栽培されている。花は緑色を帯びてよい香りがする。刺身のつまや塩漬にして湯をそそぎ飲料にもする。なお、東洋ラン以外のシュンラン属をシンビジウムと呼ぶ。


  春蘭のほそき葉さきのするどきは爽やかにこころよき
  ものにこそ              岡 麓


  春蘭のかをる葉叢に指(および)入れ象(かたち)ある花
  にひた触れむとす          北原白秋


  膨張せる物価をおもふ吾がまへに玉のごとくに春蘭ひかる
                   鹿児島寿蔵
  弥彦山(やひこやま)の春蘭といふ緑葉の細葉群(むら)立ち
  蕾三つ持つ             都筑省吾


  根分けして姉の遺せる春蘭の咲きて我より妻のよろこぶ
                    野北和義
  黒部川の激ちを下に聞きながら辿る山路に春蘭を掘る
                    木村玄外
  春蘭の一株ながら明晰の冬日をうけてしづかなる草
                    雨宮雅子