天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新緑

藤沢市新林公園にて

 初夏を象徴するのが新緑である。冬の間、枯葉を落して裸になっていた樹々に水のしたたるような若葉が繁る。まさに生命そのもの。夏の季語。みどり、緑さす が傍題。


     摩天楼より新緑がパセリほど   鷹羽狩行
     子の皿に塩ふる音もみどりの夜  飯田龍太
     みどりさす壁に牧草管理表    福永耕二


  新緑のきはみに凱旋門となる日比谷通りに芽を噴くいちやう
                     篠 弘
  新緑の庭のこずゑにきて啼けり氷菓のやうなうぐひすの声
                     米口 實
  新緑とはるかに告げ来緋鯉より真鯉はなやかなる夕つ方
                     塚本邦雄
  定職のない人に部屋は貸せないと言われて鮮やかすぎる新緑
                     松村正直
  新緑の白鳥峠こえてきし君はわたしをふるさとと呼ぶ
                     足立昭子
  五月は喪服の季節といへり新緑の駅舎出づればまぶしき真昼
                     尾崎左永子