ザクロはインド北西部からイランにかけての地方が原産地。わが国には平安時代以前に渡来したという。当初は観賞用に栽培されたが、江戸時代からはその実が食用になったらしい。俳句では夏の季語で、傍題に「花石榴」があるが、これは園芸品種で結実しない。
日のくわつとさして石榴の花の数 小林篤子
妻の居ぬ一日永し花石榴 辻田克己
怨念のしたたる朱にざくろ咲き女は一人棲む門閉す
富小路禎子
長かりしわが昏々を照らすごと柘榴は朱の花の満ちたり
木俣 修
柘榴の花の咲きたるを言ふ夕の雨に濡れつつ帰り
来たりし妻が 林田恒浩
残されて柘榴花咲く路傍かな
朱き花散りて柘榴のあり処かな
道の辺にわが残れりといふごとく柘榴はちらすその朱き花