天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秋海棠

鎌倉

 中国原産のシュウカイドウ科の多年草。江戸時代初め(寛永18年)にわが国に渡来したという。雌雄同株だが、初め雄花が数多く咲き、のちに雌花が開く。庭園で栽培されるが、暖地では日陰の湿地に野生化している。


     病める手の爪美しや秋海棠    杉田久女
     秋海棠山腹に棲み何食ひて    手塚とき子
     隠れ家の滝凄まじや秋海棠    秋山牧車
     目にしみて秋海棠の咲きにけり  遠藤梧逸
     秋海棠の花ことごとく雨雫    川崎展宏
     秋海棠誰もが母を亡くしゆく   岡崎光魚


  つくばひをめぐり秋海棠咲く庭の女あるじは歌をよむらし
                     太田青丘
  秋海棠にしたたる朝の露きよしはや眼に立ちて紅の花
                     松村英一
  秋海棠の花ほろほろといくそたび妣の涙を娘(こ)は見たらむか
                     築地正子
  降り出づとみるみる雨の激しきにこまかく揺るる秋海棠の花
                     林 安一