天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲(1)

横浜市舞岡公園にて

 微小な水滴または氷晶からなる粒が集まって大気中に浮んで見えるもの。水滴なら10ミクロンほどのものが1立方センチに50から500個浮かんでいる。漢字は、雨+云を意味する。云は回転するさまを表す。つまり雲は雨が回転するもの。古くから雲は詩歌によく詠まれた。
 ここでは和歌に詠まれた例をあげる。


  三輪山をしかも隠すか雲だにも情(こころ)あらなも隠さふ
  べしや              万葉集・額田 王


  隠口(こもりく)の泊瀬(はつせ)の山の山の際(ま)にいさよふ
  雲は妹にかもあらむ        万葉集・柿本人麿


  冬ながら空より花のちりくるは雲のあなたは春にやあるらむ
                  古今集清原深養父
  あまつ風雲のかよひぢ吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ
                  古今集・良岑宗貞
  すみのぼるこころや空をはらふらむ雲のちりゐぬ秋の夜の月
                   金葉集・源 俊頼
  月かげのすみわたるかな天のはら雲ふきはらふ夜半のあらしに
                   金葉集・源 経信
  うつりゆく雲にあらしの声すなり散るかまさきのかづらきの山
                  新古今集・藤原雅経
  あきしのやとやまの里やしぐるらむ伊駒の岳に雲のかかれる
                  新古今集西行
  あしびきの山のあらしに雲消えてひとり空ゆく秋の夜のつき
                  新勅撰集・藤原教実
  松の戸をおし明方の山風に雲もかからぬ月をみるかな
                  新勅撰集・藤原家隆