天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲(2)

鉄砲宿から見上げた雲

 以下には近代短歌に詠まれた雲の例をあげる。


  ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲
                    佐佐木信綱
  天つ風吹き立ちぬらし飛行機の翼に触れてゆく雲のあり
                    石榑千亦
  西吹くや富士の高根にゐる雲の片寄りにつつ一日たゆたふ
                    島木赤彦
  かぎり なき みそら の はて を ゆく くも の
  いかに かなしき こころ なるらむ
                    会津八一
  のぼり来し丹生川上(にふかはかみ)の石むらに雲の触りつつ
  ゐるをともしむ           斎藤茂吉


  寄り来りうすれて消ゆる水無月の雲たえまなし富士の山辺
                    若山牧水
  身は雲に心は水にまかすべう旅ゆくわれをとがめたまふな
                    吉井 勇
  まなかひに金色の雲かがよひぬ忘られがたき夕べなりけり
                    九条武子