黒揚羽
夏の蝶である。普通に蝶と言えば春の季語になるが、夏の蝶は、羽を広げると10センチにも達する大きな揚羽蝶の仲間をさす。詳しくは、鱗翅目アゲハチョウ科の一種。ナミアゲハともいう。幼虫はカラタチ、ミカン、サンショウなどの葉を食べ、蛹で越冬し、成虫は3月から10月に3回から6回発生する。日本を含む東アジアの特産。熱帯には分布しない。
つまみたる夏蝶トランプの厚さ 高柳克弘
好色の揚羽を湧かす西行忌 安井浩司
黒揚羽しづかに水を離るると陽の若者にひらく肩胛骨
浜田 到
黒揚羽生霊のごとさまよへり人に家ありて灯をともすころ
大野誠夫
キャンパスの坂は蝶通ゆらりふらり黒揚羽去り何ごともなし
塩野粼宏
漆黒の揚翅蝶(あげは)脈搏つ大寒の夜の展翅板発火寸前
塚本邦雄
花毎に黒蝶何か告げてをり薔薇園に小さき乱おこるべし
富小路禎子