忘れ草
ユリ科ワスレグサ属の多年草。花が一日限りで終わると考えられたためにこの名前が付いたという。キスゲ、ノカンゾウ、ヤブカンゾウなどがある。中国では「金針」、「忘憂草」などとも呼ばれる。
和歌に詠まれた例を以下にあげる。
我が宿の軒にしだ草生ひたれど恋忘れ草見れどいまだ生ひず
万葉集・柿本人麻呂
忘れ草我が紐に付く時となく思ひわたれば生けりともなし
万葉集・作者不詳
道しらば摘みにもゆかむ住の江の岸におふてふ恋忘れ草
古今集・紀 貫之
忘れ草なにをか種と思ひしはつれなき人の心なりけり
古今集・素性法師
すみよしと海人は告ぐとも長居すな人忘れ草生ふといふなり
古今集・壬生忠岑
忘れ草しげれる宿を来てみれば思ひのきよりおふるなりけり
金葉集・源俊頼
下紐のゆふ手もたゆきかひもなし忘るる草を君やつけけん
拾遺愚草・藤原定家