天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

紅葉狩(15)

鎌倉・長谷寺にて

 紅葉狩の未練は尽きず、今年最後の紅葉を見ようと北鎌倉・浄智寺の裏山から葛原ガ岡、源氏山公園、長谷と山を辿った。出かける朝、藤沢駅のホームで幼い鳩を見た。ホームの屋根裏には、鳩が巣をかけて雛を育てているので、そこから落ちてきたらしい。羽根がまだ未熟なので、飛び立てない。多くの乗客の足がある。誰かが駅員に連絡したかどうか。駅員はどうしたか。


     掃くほどに大銀杏ちる総本山
     大いなる音の落葉や源氏山
     寒中に木瓜咲く長谷の観世音
     弁天堂もみぢ背にする写経かな


  混みあへる駅のホームに竦み鳴く羽根未熟なる鳩を
  見捨てつ


  いつまでの命と思ふ混みあへる駅のホームの幼き鳩は
  足元の幼き鳩をあやぶみて乗車をいそぐ通勤客は
  見捨て来し幼き鳩を気遣ひてうはの空なる紅葉狩ゆく
  見捨て来し幼き鳩に昨夜見し映画「鬼畜」を思ひ出だせり
  見捨て来し幼き鳩が気にかかり長谷大仏に手を合はせたり
  この年の見納めなるか長谷寺の紅葉は朝の日に燃え立てり
  一瓶を三日に空くるウヰスキー円高なれど飲み代かさむ


 朝見かけた幼い鳩のことから、何故か次の句が思い出された。

     猿を聞く人捨子に秋の風いかに   芭蕉野ざらし紀行


[注意]時々コメントしていますが、ブログの本日の記事は現地に
    行った日時とは異なります。ブログに載せるまでに、
    一週間から十日くらい遅れることもあります。
    花や紅葉の状況の確認には、この点を考慮に入れて下さい。