天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石の歌(1)

大山阿夫利神社にて

 さざれ石は小石のことだが、それが成長して大きな巖になるという俗信があった。日本のいくつかの神社境内に飾ってある。わが身近なところでは、北鎌倉東慶寺、鎌倉鶴ケ丘八幡宮伊勢原市大山阿夫利神社下社など。
よく知られているように、国歌「君が代」の歌詞は、古今集や類似の内容の和漢朗詠集からきている。


  藤波の影なす海の底清み沈(しづ)く石をも玉とぞわが見る
                 万葉集大伴家持
  わがきみは千代にましませさざれ石の巖となりて苔の
  むすまで         古今集・よみ人しらず


  たのめつつ来がたき人を待つほどに石に我が身ぞなり
  はてぬべき        夫木抄・よみ人しらず


  しら雲は空にうかべり谷川の石みな石のおのづからなる
                    佐佐木信綱
  夕いたり石は抒情すほのかにもくれないおびて池の辺にある
                     加藤克己
  乾きたる石のおもてに雨滴滲みてゆくごとき愛を欲りすも
                   蒔田さくら子