天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新春詠(2)

箱根駅伝往路遊行寺坂にて

 以前は、元日の朝に鎌倉腰越海岸に初日の出を待ったこともあったが、近年はそのように外に出かけることはない。近くの村社の正月風景を見れば、それでこと足りる。ただ箱根駅伝だけは毎年路傍に立って走者の息遣いに熱くなる。次男の出身校である日本体育大学が三十年ぶりに総合優勝したことは驚きであった。


     大楠に風吹きすさぶ御慶かな
     初春の駅伝僧も手旗振る
     たまくしげ箱根駅伝風に泣く
     日の丸の手旗波うつ初参賀
     春眠や夢のつづきを見てゐたる


  哲学のテーマは貧困今の世に答を探すムンクの叫び
  白バイの二台につづき走りくる駅伝走者汗に光れり
  これからの日本を背負ふ若者ぞ老人たちの熱き声援
  階段を少し上りて走者を待つ遊行寺坂の一里塚跡
  大学の名前書きたるプレートを抱へてひとり学生
  が立つ


  二位三位集団として駈け下る遊行寺坂の寒風の中
  沿道に立ちて旗振る観衆に僧の頭の光れるが見ゆ
  「迎春」の貼紙ありて扉を閉ざす緑ヶ丘の釜飯の店
  災害時支援備品の赤き箱ベンチに置ける松並木跡
  駈けのぼるからだを揺らす山風に木々が葉裏を返す
  箱根路


  マンションのベランダから見るたまくしげ箱根駅伝
  復路の走者