天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

藤の季節(1)

大船フラワーセンターにて

 葉桜の頃になると藤の花が目立ち始める。大船フラワ−センターに行って感じたことだが、公園や家の藤棚で育てている藤の色は、紫がはっきりしているのに、野生の山藤は色が淡い。藤沢新林公園の藤を見に行ったら初燕を見かけた。二羽が溜池の辺の泥を啄んでいた。


     きぎす啼くビニールハウスの奥の森
     農道の側溝に鳴く残る鴨
     若草の田に芹を摘む老夫婦
     山上に観音御座す藤の花
     藤棚の下にあれこれ花の鉢
     葉桜に憂ひ見てゐる山路かな
     藤棚を見上ぐる朝の庭掃除
     きりぎしの山路を登る藤の花
     鶺鴒が道案内や藤の花
     藤棚を照らせり古き街路灯
     溜池の泥つひばめる燕かな


  農閑期終れる前の老夫婦水しみ出づる田に芹を摘む
  側溝に鴨の残りてこゑをあぐ藪には白き野いちごの花
  ツンベルギア・マイソレンシス原産はインド南部の
  きつねのまご科


  ニューギニア産と書かれて垂れさがる翡翠葛のムクナ・
  ベネッティ


  草枕旅の空なるトリックの推理作家は湯河原に住む
  溜池の泥つひまめる燕二羽無心のさまのむつまじく見ゆ