弥勒菩薩
釈迦入寂後56億7000万年たってこの世に現れ衆生を救うとされる。末法思想の流行により日本でも信仰が盛んになり、すぐれた仏像が作られた。
我が恋のかねのみたけのかねならばみろくのよにも
あはましものを 夫木抄・源 仲正
喪ひしもののかへりをうけとめて耳ながく秋を弥勒は
坐せり 山中智恵子
ひそかなる仏師の恋のかなしみか弥勒は清き唇たもつ
馬場あき子
千年の佇立をけふに弥勒像唇(くち)に差したる紅匂ふかな
初井しづ枝
頬に指手触るるまへの弥勒像おもへば仄かにみだれ給へり
稲葉京子
千年の思惟はいかにか頬に手をあてたる半跏の弥勒の愁ひ
久々湊盈子
この寺を出ようとおもふ 黄昏の京(みやこ)を訪へば
彌勒ささやく 栗木京子
先つ世は楠なりし弥勒像とほき記憶に鳥が棲みゐむ
田宮朋子