天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

わが食卓より

 バラ科ナシ属の落葉高木。ニホンナシは、野生種を古くから改良してつくられたもの。果肉に石細胞が多く独特の舌ざわりがある。品種には、二十世紀、長十郎、幸水、菊水などが知られている。


     月さすや洋梨の荷の開けられて    川崎展宏
     梨食ふてうすむらさきにけぶるかな     同上


  梨をむくペティ・ナイフしろし沈黙のちがひたのしく夫と
  われとゐる               松平盟子


  砂丘ゆくらくだのこぶの中の水甘きや梨の実剥けば秋の夜
                      草田照子
  東京に見合いに来たる妹と吾が剥きやりし梨を食いたり
                      黒岩剛仁
  梨の木に梨の実ふとりゆく日日を天与の雨にまさるものなし
                      築地正子
  限りなく熟れて緊張感のある梨の畑に午後の雨降る
                      戸田佳子
  梨の芯腐るを見れば思うなりちから合わせし春秋のこと
                      佐伯裕子