天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白桃

わが食卓より

 すでにとりあげたように万葉集にも詠まれている(2012年8月22日)。以下にはそれら以外の作品をご紹介しよう。かけがえのないものとして詠まれることが多い。


  白桃の柔毛透かして見てゐればすずしく人はもの言ひてくる
                    百々登美子
  白桃の和毛(にこげ)ひかれり老いびとの食みあましたる夢の
  ごとくに               米口 實


  白桃は汁淋漓たり憤(いきどほ)りかく流し吾は老に入りゆく
                    富小路禎子
  玻璃ごしの陽ざしにそっと抱くとき喃語は白桃のごとくにやわし
                     吉田みのる
  幼子はいたく笑ひぬ夜の淵にありて白桃食べをへしとき
                     佐藤通雅
  夜のおもき儀式のごとくふたつなき白桃をわれは母と頒(わか)ちぬ
                     小池 光