時計(2)
学生や社会人になって若い頃は、腕時計のデザインや機能に凝った時期がある。千円程度で十分信頼できるデジタル時計が出てからは、実用になればよい、と割り切ってしまった。だから安価な腕時計で済ませた。更に歳を経ると、町中では見えるところのどこかに時計が掛っているので、腕時計の必要性を感じなくなってしまった。まして携帯電話やスマホを持つようになっては、腕時計は不要になってしまった。
岩の上に時計を忘れ来し日より暗緑のその森を怖る
前登志夫
ゆるびたる時計のねぢを巻きて眠るなほいのちある明日
をたのみて 上田三四二
暗がりに柱時計の音を聴く月出るまへの七つのしづく
河野裕子
デジタルの時計に刻む時見えてうつつ過ぎゆく否も応もなく
湯本 竜
われといふ時計は疾うに停止して「なぜにおまへは生きて
ゐるのだ?」 仙波龍英