天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

マンション

藤沢市にて

 現在のわが国では、アパートよりも大型の集合住宅を表すが、英語の語源では豪邸の意味を有する。マンションが現れた当時の日本人の感覚では、豪華な感じを持たせたかったのであろう。


  身の上に十幾層のマンションの部屋あり重み真夜におぼゆる
                     入谷 稔
  隙間なく隣にマンション建ちてより電話のベルに常に戸惑ふ
                     佐藤志満
  マンションに生まれし一人のみどり子をわれら囲めり金魚
  見るごと               佐伯裕子


  マンション群に霞たちこめ蕾めく千の家族が一部屋ずつ浮く
                     古谷 円
  妻を子を遠ざけて病むマンションに暁すぎて日の光り初む
                     上野久雄
  マンションの窓に大鴉の気配してポオのごとくに生きよと
  告げる               藤原龍一郎