天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の寒川神社

寒川神社境内にて

 相模国・一之宮の寒川神社の朝は、師走でも閑散としている。煤払いも済み年末年始を飾る木々の照明電球の取り付けも終って手持無沙汰の数日であろう。境内の八福餅を売る屋台のおばさんは、参拝者を見かけるたびに「いらっしゃい」と声をかけている。本殿ではお祓いをしてもらう人々がいて、白装束を着て椅子に並んでいた。


     めでたさは注連縄わたす夫婦比婆
     鵯啼いて糞する神社参道に
     極月の八福餅を杜に買ふ
     紅葉にほのかあからむ御製の碑
     泣きながら冬の橋くる勤め人
     窪つけて畑の畦に種を播く
     種蒔きの手元見てゐる駅の朝


  放射能を無力化するは人類の最重要の夢となるべし
  幣饌料御下賜記念植樹とぞ檪、辛夷を並べ植ゑたり
  果てしなく青き冬空画したり橋桁高き高速道路
  電球が木々の梢に垂れ下がる寒川神社師走閑散
  師走来て寒川神社の本殿に白装束の人ならびたり
  日の丸の旗の下なる紅葉にほのかあからむ御製の歌は
  渾天儀支へて立つかそれぞれの龍が掴める金色の玉
  ヒサカキの蔭に光れり後足に龍のつかめる金色の玉
  ユネスコ世界遺産になる和食アスペルギルス・
  オリベ花咲く


  醤油屋の蔵に花咲く麹菌世界遺産の和食支ふる
  平造り鯛の切れ目に醤油沁む日本酒二合熱燗にして