木枯しの俳句で有名になったのは、池西言水であった。「凩の言水」と呼ばれるほどであった。言水は松尾芭蕉と同時代、江戸時代初期の俳人である。奈良出身だが、江戸、京都はいうに及ばず北越、奥羽、九州などにも出かけている。時流には敏感で元禄年間に流行し始めた前句付、笠付などの雑俳にも手を染めている。
凩の果はありけり海の音 池西言水
こがらしや頬腫痛む人の顔 芭蕉
木がらしの地にも落さぬ時雨かな 去来
こがらしや何に世わたる家五軒 蕪村
凩や碑(いしぶみ)をよむ僧一人 蕪村
こがらしや鐘に小石を吹当る 蕪村
こがらしに二日の月のふきちるか 山本荷兮
海に出て木枯帰るところなし 山口誓子
この山口誓子の句は、池西言水の句の本歌取りである。ただ、誓子はこの句で第2次世界大戦中の特攻隊を象徴したという。