天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

凩を詠む(3)

片瀬海岸にて

 木枯しの俳句で有名になったのは、池西言水であった。「凩の言水」と呼ばれるほどであった。言水は松尾芭蕉と同時代、江戸時代初期の俳人である。奈良出身だが、江戸、京都はいうに及ばず北越、奥羽、九州などにも出かけている。時流には敏感で元禄年間に流行し始めた前句付、笠付などの雑俳にも手を染めている。


     凩の果はありけり海の音      池西言水
     こがらしや頬腫痛む人の顔       芭蕉
     木がらしの地にも落さぬ時雨かな    去来
     こがらしや何に世わたる家五軒     蕪村
     凩や碑(いしぶみ)をよむ僧一人     蕪村
     こがらしや鐘に小石を吹当る      蕪村
     こがらしに二日の月のふきちるか  山本荷兮
     海に出て木枯帰るところなし    山口誓子


 この山口誓子の句は、池西言水の句の本歌取りである。ただ、誓子はこの句で第2次世界大戦中の特攻隊を象徴したという。