天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

凩を詠む(2)

片瀬海岸にて

 「こがらし」は木枯とも表記するが、秋から冬にかけて吹き、文字通り木の葉を落し枯木にする強風のことである。木嵐から来ているとの説あり。天気図の気圧配置が西高東低型になったときに吹く。


  こがらしの雲吹きはらふ高嶺よりさえても月の澄み
  のぼるかな          千載集・源 俊頼


  山里は秋の末にぞ思ひ知る悲しかりけり木枯の風
                   山家集西行
  高円(たかまど)の野路の篠原末さわぎそらやこがらし
  けふ吹きぬなり       新古今集・藤原基俊


  いつの間に空のけしきの変るらんはげしき今朝の木枯し
  の風            新古今集津守国基


  茫々としたるこころの中にゐてゆくへも知らぬ遠のこがらし
                     斎藤茂吉
  焼く餅のふくれ見入りてひとりなり外はくれゆく木枯の風
                     松田常憲
  こがらしの寒き一日の夕づきて炭火の上に煎子(いりこ)
  あぶりぬ               扇畑忠雄


  鳴く山羊に寝床を起きて行く妻や夢のつづきの如きこがらし
                     近藤芳美