天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鑑賞の文学 ―短歌篇(36)―

文春文庫

 今年の流行語大賞のベストテン4位になった「倍返し」を短歌に詠んだ例が現れた。「現代短歌」2013年11月号に載った小池光さんの「今年の秋」13首のうちの最初にでてくる次の2首。


  日曜の夜くることをまちかねて「半沢直樹」はわれさへも
  観(み)る


  倍返しする敵(かたき)もをらずわがめぐりあをきすすきの
  穂が揺れはじむ


 歌の工夫は、一首目では結句にある。茂吉を感じさせる小池調で思わずニヤリとする。また二首目で注目すべきは、三句以下のさりげない情景の転換にある。
 「倍返し」は周知のようにTBSのテレビ・ドラマ『半沢直樹』における主人公の言葉。ドラマの原作は、ベストセラーになった池井戸潤の『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』である。原作は読んでいないが、テレビ・ドラマは大変面白く、毎週心待ちにしていた。
 池井戸潤の小説では『下町ロケット』を読んで感心した覚えがある。 読みだしたら途中で止められなかった。