天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の片瀬・江ノ島

片瀬漁港にて

 片瀬漁港は境川河口に隣接する。周辺の海では、大型定置網漁業、引き網漁業、刺し網漁業、海面養殖業、地引き網 などの漁がされ、主にシラス、アジ類、サバ、ワカメなどが獲れるという。土曜日以外の毎日、九時から正午まで直売所が開かれる。ただ早く行かないと欲しいものが売り切れになってしまう。港内にはいつも海鵜を見かける。そこここのブイに止まって羽根を乾かしている。
 先日は凩に遭って江ノ島には行けなかったので、あらためて師走の江ノ島に出かけた。島内はクリスマス向けの照明飾付けが進んでいた。岩場にはイソヒヨドリがいて沖をじっと見つめていた。


     椰子並木葉陰に透ける雪の富士
     参道を下りくる巫女のマスクかな
     凩の生れしところか富士の峰
     釣竿のしなふ向かうに雪の富士
     釣人の空に鳶啼く師走かな
     冬潮を噴きて洞鳴る島の朝
     冬潮や小石の沈む穴いくつ
     江ノ島や瑞心門の冬灯
     オットセイが頬にキスする師走かな
     照り翳り淡き冬陽の停留所
     渋滞の道に苛立つ去年今年


  釣禁止遊泳禁止の港内に釣り舟ならぶ極月の朝
  釣終へし舟かは知らず鵜の鳥のいこふ漁港にあまた並べる
  岩頭にとまりて沖を見てゐたり磯鵯(いそひよどり)の
  師走の孤独