天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雉子(1)

東俣野の田野にて

 わが住む東俣野には農地や林が広がっている。といっても牛馬を飼っている農家はない。トラクターを使用しているのである。そんな田野に春の草花や昆虫、鳥などを探して歩くことがある。ある日のこと芹や蓬の写真を撮りたいと田圃の畦を伝って歩いていたら、キジが啼いた。すぐ近くに声が聞こえたので、その方角に目を向けると畑を囲む低木の防風の木立の蔭に、雄のキジの姿を発見した。それが右上の画像である。キジは雉とも雉子とも書く。俳句では春の季語である。
ちなみに雉の鳴き声と�晧の音から「けんもほろろ」という言葉が生まれたという。「人の頼みや相談などを無愛想に断るさま、取り付く島もないさま」を意味する。どうもうまく結びつかないのだが。


     撃ちとつて艶なやましき雉子かな    飯田蛇笏
     雉子の眸のかうかうとして売られけり  加藤楸邨
     雉子打の濡れて帰るや草の雨      尾崎紅葉
     雉鳴くや風ゆくところ山光り      相馬遷子
     耳立てて雉子走りけり芝の上      堀口星眠


     啼き交はす声間遠なり雉の朝
     春愁をたまゆら破る雉の声
     高啼くや俣野の雉子(きぎす)不用心
     飼ひ犬をびくつかせたり雉の声


  防風の木立の蔭に安んじて雉子啼きにけり赤黒き貌