天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雉子(2)

東俣野の田野にて

 キジ科の鳥で日本特産であり、日本の国鳥。狩猟の対象になり肉は美味という。古名には、キギシの他に、野鳥(のつとり)、さぬつ鳥などがある。この二語は、雉子にかかる枕詞にも使われた。なお「焼野のきぎす」は、子を思う親の情愛に譬えられた。万葉集では八首に詠まれている。


  あしひきの八峰(やつを)の雉(きぎし)なき響(とよ)む朝明
  (あさけ)の霞見ればかなしも   万葉集大伴家持


  春の野の繁き草葉の妻恋ひに飛び立つ雉のほろろとぞ鳴く
                  古今集・平 貞文
  春日野に朝鳴く雉(きじ)のはね音は雪の消えまに若菜つめとや
                  詞花集・源 重之
  冬枯れのすそ野の原を焼きしより早蕨(さわらび)あさり
  雉子(きぎす)鳴くなり          藤原俊成


  明けぬとて鳴くやきぎすの声のうちにほのぼのしらむ春の山畑
                      村田春海
  青雲ゆ雉子鳴き出づる大倭(ヤマト)べは、思ひ悲しも。青ぐもの色
                      釈 迢空
  とぎ澄ます耳に雪ふり裏山をわたれる雉子(きぎす)の天(そら)
  斬(き)るこゑも             大滝貞一



[注]明日、明後日は小旅行のため、ブログを休みます。結果を後日報告します。