秩父の狼信仰(1)
オオカミ信仰の中心となっている秩父地域には、かつて多くのオオカミが棲息していた。今日ではすでに絶滅したと考えられる山犬・ニホンオオカミが、その地域の人々から「山の神」の化身とされていた。オオカミは農作物に被害を与えるイノシシやシカ、サルなどを追い払い、火災や盗賊の危険を人々に知らせるといわれた。
三峰神社に伝わる話では、日本武尊が東征の帰り道、奥秩父の山々を越え、初めて三峰神社にイザナギノ尊・イザナミノ尊の両神を祀られたとき、山犬または白いオオカミが現れて道案内をしたといわれている。その他宝登山縁起には、山火事から日本武尊を救い出したという話もある。
宝登山神社に登ってみた。社伝によれば、景行天皇41年(111年)、天皇の皇子・日本武尊による東征の際、尊が遥拝しようと山頂に向っていると巨犬が出てきて道案内をした。その途中、東北方より猛火の燃えて来るのに遭い、尊の進むことも退くこともできない状態になってしまった。すると巨犬が猛然と火中に跳入り火を消し止め、尊は無事頂上へ登り遥拝することができた。このことから「火止山」の名が起き、のちに「宝登山」となったという。
生活は貧しけれども村あげて神楽、獅子舞、人形芝居
春は梅夏はつつじの花盛りヤマトタケルを祀る宝登山
両神とふ狼犬に護られてヤマトタケルの登り来し山
巨犬がヤマトタケルを導きて火を消しにつつ山に登りぬ
おほかみが今なほ棲むと仰ぎ見る秩父の奥の三峰の山