天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

藤を見に行く(2)

小田原城にて

 藤の季節とくれば、小田原城の「御感の藤」も見逃せない。二宮神社入口の蓮の濠の傍に藤棚がある。この藤も毎年見に行っている。二宮神社境内や天守閣の傍にある楠の大木の若葉がなんとも清々しく気持ちがよい。御用米曲輪の発掘はこの日も続いていた。


     小田原城若葉を抜ける天守
     鯉の背の波紋にゆらぐ蓮かな
     蓮生ふる濠にかむさる楠若葉
     白壁に鉄砲はざま風かをる
     小田原城常盤木門の躑躅かな
     猿の仔のかぼそき声や楠若葉


  蝋燭か煙草か意匠火を点し焼却炉塔が青空に立つ
  白帽と赤帽の組の園児らがそれぞれ並ぶ本丸広場
  風かをる楠の若葉の下にあり報徳二宮神社回廊
  蓮生ふる濠に棲みたる鯉どちは赤き躑躅の花に口開く
  はつかなる風にもなびく花房のむらさきあはれ御感の藤は
  居座りてしやべりやまざる老どちは御感の藤の花房の下
  大樟の若葉の下に休みたり御感の藤を遠く眺めて
  小田原城本丸跡に佇めば檻の仔猿のこゑのかぼそき
  せつせつと土掻き均す曲輪跡屈める人の手先見てゐる
  小田原城発掘調査を思ほへば駅のホームを風わたりたり
  電線にとまりて何を求むらむさへずりやまぬ五月のつばめ